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 第25回掲載 ディスクインプレッション(wildさんより)
三上 寛の世界/三上寛 COCA-11611 '92.11.21

 オラァぶったまげた!取りあえずそれしか言えなぇ。”ばかぶちり”の言うとおり元祖パンクだ。ここまで思考回路を停止できるヤツってのはなかなかいないんじゃないか。観念というものを徹底的にぶち壊した歌は確かにパンクに通じるものがある。
 なんでこんなのを聞いたかと言うと、フォークに興味を持ち始めて「中津川ジャンボリー」や昔の吉田拓郎なんか聞き漁ってた時だ。なぎら健壱の本で「フォーク私的大全」で三上寛の事が書いてあってかなりイってる人だと僕に印象づけたので試しに聞いてみようかという事からと、その頃友人に「渋滞の車の中で聞いてて面白いテープ作ってよ」と頼まれ、色々ネタ(殆ど放送禁止が集まった、自分で作って笑えるけど二度と作りたくない)を探してた時、これも聞いてみようと思い、中古レコード屋でベスト盤が売っていたので早速買って家で聴いてみた。CDを掛け1曲目が流れた途端、日本文化の象徴のような和太鼓が流れてきた。「へ?俺フォークのCDを買ってきたんだよね」とのっけからフォークの常識を破る歌が聞こえてきた。ライナーでも書いてあったが「俺は新しい歌謡曲を創る意欲に燃えていて、フォークシンガーになる気なんてさらさらなかった」と語り、ルーツは他のフォークシンガーがボブ・ディランだとすれば三上寛は小林旭がルーツだと言う。なぎら健壱が著書の中で「演歌と言うより”怨”歌と言った方がいい」と語った。確かにのっけの「馬鹿ぶし」はカバーで演歌としか言えない程、歌にこぶしが入ってる。内容もやるせなさと言ったものが歌われ、何か怒ってるようだった。2曲目はアコギ一本でタイトルの通り、子守歌だが、田舎の夕焼け空が射す畳の上で戦時中生き残った婆さんが三途の川で歌ってるようで逆にうなされそうな子守歌だ。「カラス」は凄い。歌の前ふりで「人が死んでいるので僕は海に捨てようと思った、東京タワーの下で吉永小百合と会った、”貴方は何処に行くのか?”と尋ねられたので僕は海に捨てに行くのだと答えた。人が死んでいるので僕は海に捨てに行くのだった。青森駅の風呂屋の路地でまぼろし探偵団と会った...」これを聞いて「なんだこいつ?何者なんだ?何故吉永小百合が出てくる?」と訝しんだのは言うまでもない。他のフォークシンガーが「喫茶店で働く彼女」「結婚する君」等などの歌詞を綴るなら、三上寛は「ツバメと心中する肉屋のオカミ」や「ステテコを履いた生娘」だ。あきらかに他と一線を画する。それに歌詞の運び方も上手い。時々どっからこんな歌詞が出るのか不思議だが。4曲目は同じく田舎の婆さんに説教されてる感触を受ける。虚無感が曲の間中で漂ってる。三上寛の歌は他のヤツには歌えない土俗的なエナジーがひしひしと伝わってくるモノがある。5曲目、「おど」僕が一番笑ったけど、心の中で”頼むから勘弁してくれ〜”とストップボタンに手を掛けそうになったインパクトがありすぎの曲だ。歌詞はとてもじゃないが掲載出来ない。内容はおど(東北地方の方言で親父を意味するものと思われる)の為に、姦通していた兄の妻と酒に溺れたおどの暴力で家出した末っ子と稼いだ金を全部酒代につぎ込まれた婆さん、三人が首をつって死んだのはおどのせいだと永延と恨みを重ね、”みんな死ねばいい”と最後は絶叫しまくる凄まじい内容だ。この歌に対抗出来るのは「昭和枯れすすき」か山崎ハコの「呪い」ぐらいなものだろう。聴いてて、まるで真冬の吹雪の中、幽霊にでも恨まれるかのような印象を受けた。「ピストル魔の少年」は同じ同郷の広域手配109号ピストル射殺魔事件”永山則夫”少年のシンパニー曲。「殺人や暴行が犯罪だってのは、ありゃ体制の冗談だ。永山君はもしかしたら冗談を言っていたのに違いない」これが詩人らしい彼の曲の前フリ。今で言えば神戸で起きた犯罪を歌ってる様なものです。もちろん、これが原因で「三上寛の世界」は市場から撤収されて長い間、日の目を見ることは無かった。次の「木」は正当派フォークみたいな曲だった。ここまでぶっ飛んだ後に普通のフォークを聴かされるとある種違和感が僕にかあった。「小便だらけの湖」は有名な”帰れコール”でシラケムードになった中津川フォークジャンボリーで歌われた曲(唯一”帰れコール”を受けなかったのが三上寛。放送禁止用語をバリバリに言って観客の度肝を抜いた為)。歌詞の運び方と良い、言葉のセンスといい、パンクだ。お洒落だとか流行りだとかのフォークの青臭さを木っ端みじんに打ち砕く言葉のテロリズム、本気か冗談か区別がつかない”大馬鹿ぶし”を絶叫しまりる詩人はアルバム全体に疎外感が包まれる中、相当な覚悟で”血”で歌ってる。それは逆に生の執着心を剥き出しにしている姿でもあった。「詩人は呪われているが盲目ではない」引用は忘れたが、三上寛は曇り無き眼で世界を見て、独自の表現をしている。

・馬鹿ぶし
・ものな子守歌
・カラス
・数珠の玉切れた日に
・おど
・なぜ
・ピストル魔の少年
・木
・小便だらけの湖に
・夢は夜ひらく

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